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クリニックの新規開業における、受付業務の準備ポイント

PCをチェックする医師のイメージ

クリニックの新規開業には、様々な準備が必要です。シスポは2,500件以上の医療機関様の受付、事務に関わる業務をサポートしていますが、先生方の中には半年にも満たない期間で開業した方もいれば、3年〜5年ほどの時間をかけ、着実に計画を進めてきた方もいらっしゃいます。

開業の準備のかたちは人それぞれですが、今回はそんなシスポが、新規開業に向けた、事務や会計業務も含めた受付まわりの準備ポイントをご提案。
スタッフが働きやすい環境を整備するためのヒントもご紹介しますので、開業予定の先生方はもちろん、開業後に受付フローを見直したい方もぜひ参考にしてみてください。

クリニックにおける受付業務の重要性

開業された先生方が勤務医時代とのギャップを感じる要素のひとつに、受付、会計業務やフローに関しても、ご自身の管理下にある点が挙げられます。もちろん実際に業務を行うのはスタッフさんですが、動線や業務の流れにご自身も介入し、体制を整える必要があるのです。

特に、受付はクリニックの「顔」。患者様への対応がダイレクトに「クリニックの満足度」に繋がるとも言えます。また、会計、診療報酬請求業務など、クリニックの運営を支える重要な役割も担っているのです。
開業準備をする際は、このような受付にまつわる業務の大切さを理解した上で、体制構築、スタッフの採用等を進めるようにしましょう。

クリニックの開業準備のステップ

クリニックの開業準備には以下のようなステップがあります。そして、下の画像で印を付けたところが、受付業務に関わる部分です。

クリニック開業準備のステップ

ここからは、受付に関わる各ステップについて解説します。


内装設計:スタッフさんや患者様の動線を考慮する

まずは内装のスケジュール目安について。物件の確定後、内装に関わる工程は最短でも半年ほどを見ておきましょう。トラブルを考慮し、理想としては8カ月ほど前から動いておくと安心です。

内装のスケジュールのステップ

設計時は、受付から会計までの受付業務に関わる動線も検討しましょう。スタッフさんの業務のしやすさも意識し、以下の点に注意してください。

  • スタッフさんの動線と、患者様の動線が被らないようにする
  • 受付から、クリニックの出入り口が見えやすいようにする
  • 患者様の動きが把握しやすいようにする
  • 個人情報保護の観点から、受付業務や問診をする際に他人の情報が見えないようにする
  • トイレや診察室などの位置を分かりやすくする

スタッフさんが動くスペースを、患者様からは見えない位置に確保できれば、ちょっとした伝言や資料の受け渡しもスムーズです。

また、受付カウンターの高さや広さも重要。患者様と目線を合わせて話せる設計を意識します。電話で予約受付を取る場合は、電話機を置き、スタッフさんが対応しやすい設計にも考慮しましょう。

医療機器、ITシステムの選定:レセコン選定時は、特にスタッフさんの意見を参考に

1. 医療機器

医療機器は主に医師が診察室や検査室で使用するため、スタッフさんの担当範囲はほとんどないかもしれません。
一点注意すべきは、スタッフさんが患者様を案内する際の対応です。説明マニュアルなどを整備しておくと、とっさの患者様からの質問にも答えやすくなり、患者様の安心感にも繋がるでしょう。

2. 電子カルテ、レセコン

電子カルテも医療機器と同様、主に院長先生やその他の医師の方が操作するもの。しかし、クリニック向けの電子カルテの場合、受付状況を管理できるものや、患者様ごとに「診察中」「会計待ち」などのステータスを細かく記録できるものもあります。さらに、予約・問診システムと連動しているパターンも珍しくありません。

つまり、今やクラークとしての業務以外で、スタッフさんが電子カルテを操作する機会は多くなっています。患者情報を管理し、診察に関わる情報を共有するツールでもあるため、予約や問診のフローを検討しながら、開業の半年ほど前から電子カルテを選びましょう。電子カルテは、診療科特有のセットを登録するなど、事前準備が必要なケースが多いです。これから話すITシステムとの連携・設定のための期間も考慮し、早めに各メーカーへ問い合わせてください。

そして導入時の、メーカーやベンダーによる操作説明会には、スタッフさんにも同席してもらいましょう。機械操作に慣れない方がいる場合は、開院までにスムーズな操作ができるよう、余裕のある習得期間を設定します。

レセコンは、電子カルテよりさらにスタッフさんの業務と密接に関わっています。レセコンとは、医療機関が、全国健康保険協会や健康保険組合などに対し、診療報酬を請求するために必要な「レセプト(診療報酬明細書)」を作成するコンピュータのこと。
今や開業に、電子カルテとレセコンは必須アイテム。そして先生方はレセコンにはノータッチで、スタッフさんがレセコンを操作し、会計・レセプト業務を担うケースがほとんど。

患者様の保険適用の有無を確認し、料金の計算と支払い処理を行う作業は、医療機関の会計情報を正確に管理し、正しく関係機関へ請求するための大事なステップです。クリニックの収入、つまりは経営にも関わる非常に重要な工程と言えます。

そのため、この部分は実際に操作するスタッフさんの意見を聞きながら選定することをおすすめします。電子カルテとレセコンが連携するタイプや、電子カルテとレセコンが一体型になったものもあるため、両方を同時期に検討しましょう。

実はこれまでに、レセコンが電子カルテと円滑に連携できなかったために、スタッフさんの会計業務が効率化できず、電子カルテを入れ替えた医療機関様もありました。そういったトラブルを事前に防ぐためにも、電子カルテやレセコンに関わるメーカーへの連携面の確認も忘れずに。

3. 予約、問診システム

受付業務には、以下のような作業が含まれています。

  • 患者の来院受付
  • 保険証の確認
  • カルテの作成
  • 問診票の記入
  • 検査の予約

患者様によっては、この工程の前に「来院の予約」をする方もいらっしゃいます。スタッフさんはそれを、電話やホームページの予約ページから受け付けます。

とあるクリニック様では、コロナ禍にワクチン接種の予約・問い合わせ電話が頻発。スタッフさんが本来の受付業務ができなくなったことをきっかけに、予約システムを導入し、電話対応を廃止しました。予約場所がホームページのみに絞られたことで、業務の混乱も解消されたようです。

もちろん、自院の患者様の年齢層や、来院患者数の想定を考え、予約システムを導入しない選択肢もあるでしょう。いずれにしても、予約受付の方法や流れを事前に設計し、より良い運用方法をスタッフさんと一緒に考えていくことをおすすめします。
また、先述したように、電子カルテと予約システムが連携する場合や、電子カルテそのものに予約受付機能が備わっているタイプもあります。つまり予約システムも、電子カルテを導入する前後に合わせて検討するのが理想です。

問診システムも、予約システムや電子カルテと連携できるものがあるので、自院での運用フローを検討し、選定にあたってください。こちらも、患者様の年齢層や来院患者数を想定し、導入の是非を見極める必要があります。

最近では、問診記入用のタブレット端末を用意し、紙運用を完全に廃止するクリニック様も増えている印象です。機械操作が苦手な患者様には、スタッフさんが問診内容を確認しながら操作をサポート。患者様とのコミュニケーションは大切にしながら、カルテへの転記が不要となったことで、業務負担削減に繋がっています。

4. 自動精算機、自動釣銭機(セミセルフレジ)

開業後の日々の業務で特にスタッフさんの頭を悩ませるのは、つり銭のミス等によって生まれる違算金です。そういったトラブルを解決するものとして注目されているのが、自動精算機やセミセルフレジ。

これらの機器は、会計時の金銭授受などのやりとりを自動化することで、スタッフさんの業務効率化、業務負担の削減を実現します。締め処理の対応に疲弊し、スタッフさんが残業せざる得ない状況も防止できます。

手打ちのレジシステムを使っていた時に度々起こる「違算金」問題を解決するために、セミセルフレジOWENを導入したクリニック様は、以下のような導入メリットを挙げていました。

  • 会計時の人的ミスがなくなった
  • おつりを間違ってはいけないというプレッシャーも減った
  • 会計業務の時間を効率化できたことで、他の受付業務に集中しやすい環境となった
  • 多様なキャッシュレス決済に対応してからは、患者様からポジティブな反応が増えた

自動精算機やセミセルフレジの購入は、もちろん決して安い買い物ではありません。導入費用やスタッフさんと患者様の利便性を考え、検討しましょう。また、活用できる補助金や助成金もあるため、メーカーやベンダーに問い合わせて、コストダウンできる手段を確認するのもおすすめです。

人材採用、研修:約2カ月前から開始。契約に関わる書類や手続きも忘れずに

スタッフ募集は、開業の2カ月ほど前から開始しましょう。それより遅くなってしまうと、スタッフさんが生活環境の準備や、業務に関わる研修に時間を割けないまま開業日を迎えてしまうかもしれません。

また、採用人数は「必要最低限」ではなく、ある程度余裕を持った人員体制が理想。スタッフさんによっては時短勤務を希望する方や、時間的な制約がある方がいるかもしれません。必ずしもフルタイムで融通がきくシフト体制が組めるとは限りませんし、有給休暇を取りやすい体制を作るためにも、そういった配慮が必要なのです。

そしてスタッフ採用の方法には、大きく以下の2つの媒体をイメージする方も多いでしょう。

  • 医療事務に特化した転職サイト
  • 大手企業の転職エージェント

今回、加えてご提案したいのが、自院のホームページを活用する手法。転職エージェントなどを経由してスタッフさんを採用した場合、その人材の年収の約3〜4割を報酬として支払う必要があります。年収400万円のスタッフさんを採用するなら、120万円〜160万円のマージンが発生。その費用を削減すべく、ホームページを精力的に運営してカバーするケースもあるのです。

では、開業前に自院のホームページから採用するにはどうすればいいのか。
それは「院長ブログ」です。クリニックを開業する前から自院のホームページをオープンし、開業に向けた想いや自院の理念を説明する記事を書いたり、開業準備の様子を写真付きで報告したりすることで、クリニックの雰囲気や院長先生の考えを理解してもらえます。

それを見て応募してきた方は、すでにクリニックの理念や院長先生の考えを把握した上で「働きたい」と思ってくれた可能性が高く、採用のミスマッチ防止にも繋がるのです。

また、スタッフ採用で注意してほしい点は「労働条件通知書」を作成し、スタッフさんに必ず渡すことです。雇用契約書は作成義務ではありませんが、労働条件通知者は労働基準法第15条第1項により、作成義務とされています。(参考:厚生労働省 よくある質問「採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。」)

加えて、社会保険や労働保険の契約手続きも、管轄の年金事務所、労働基準監督署、ハローワークなどで行う必要があります。必要書類やスケジュールに不安がある方は、社会保険労務士に相談すると安心です。

スタッフを採用した後は、研修や準備も忘れずに。以下のような研修・確認を行い、開業初日から、患者様をお待たせしない仕組みを構築しておきましょう。

  • 医療機器やITシステムの操作研修
  • 請求業務の確認
  • 診察フローの確認(模擬診察の実施)

家具、備品の調達:患者様の対応も考えた選定、配置を

家具や備品の調達は、業者からの提案や、ご自身による情報収集を経て行いますが、待合室のソファーやキッズスペースの備品等は、患者様に接する機会が多いスタッフさんの業務にも関わります。

例えば、待合室の座り心地、スタッフさんと患者様が目線を合わせやすい高さであること。さらには受付から患者様を把握しやすい、視界を遮らない背もたれの高さにも注意します。
備品棚も、高さや備品の取り出しやすさを意識しつつ選定し、スタッフさんの動線を遮らない配置を心がけましょう。

内覧会の開催:クリニックを印象付けるチャンス。スタッフさんへの意識共有も実施する

内覧会は、クリニックの設備や診療内容、雰囲気、院長先生について知ってもらう貴重な機会です。必ず実施するものではありませんが、地域の方とコミュニケーションを取るきっかけとして、開業日の1カ月前ほど前に実施するケースも珍しくありません。

内覧会を実施する場合は、内覧会の意味・目的をスタッフさんに共有したり、企画に協力してもらったりして、ともに自院と患者様の関係性を作り上げることも大事でしょう。

では、具体的に何をするか。いくつかの例を記載しておきます。

・診療・治療行為に関する案内、質疑応答

→悩み、症状などに寄り添った自院の説明を院長先生自ら行います。来院された方が信頼感を持ち、足を運ぶきっかけにも繋がる大事な部分です。

・院内、医療機器の説明

→検査機器や、プライバシーに関わる配慮、キッズスペースのご説明など「自院だからこそ提供できること」を具体的に説明します。クリニック運営に関する想いと合わせて説明すると、納得感も持ってもらえるでしょう。

・ノベルティのプレゼント

→想定する患者層に合わせてコスメブランドのプチギフトを用意したり、QUOカードなどをお渡ししたりするケースも。歯科の場合は歯ブラシやケアセットも人気です。地域の方との関係性を築く意味で、近所のパティスリーの焼き菓子をご用意したケースもあります。

・その他イベント

→お子様が来院される歯科や小児科の場合、ボールすくいやクイズ大会、バルーンのプレゼントなどで楽しんでいただく工夫も忘れずに。「病院(クリニック)がこわい」というイメージを払拭することで、来院のきっかけに繋がるかもしれません。

・開業後の初診予約の案内

→整形外科や内視鏡内科、歯科などは検査に関わる初診予約を承るケースもあります。

当日は、来院された方に対するスタッフさんの対応も「クリニックのイメージ」に関わります。いらっしゃった方々が快適に過ごしながら、クリニックについて理解できるよう、接遇や説明内容も事前に共有しておくことをおすすめします。


開業後のヒント3選

ここまでが、開業準備に関わる説明でした。しかしクリニックは開業してからが本番です。
ここからは、スタッフさんの業務や勤務に関わる、開業後のポイントを3つに厳選してお届けします。

1)診療報酬改定への対応:院長先生は「スタッフが相談できる機関」を設定しサポート

診療報酬は、2年に一度改定されます。
例えば2022年度には、オンライン診療の初診料、再診療、外来診療料などが新設されました。2020年度には、かかりつけ医機能の推進を目指し、地域包括診療加算の要件が緩和されたり、小児かかりつけ診察料、小児外来診察料の算定対象患者を3歳未満から6歳未満へと拡大されたりと、毎回様々な変化があります。

レセプト業務に関わるスタッフさんにとって、診療報酬改定は大きな負担。医師がこの業務に関わるタイミングは比較的少ないかもしれませんが、診療報酬改定やレセプト業務で困った際に、サポートしてもらえるサービスや機関を決めておくなど、院長としてできることは多分にあります。

2)患者満足度の調査や改善:スタッフ個人を責めずに、建設的な改善検討を

開院して1年ほど経過したら、半年〜1年ごとに患者アンケートを取りましょう。正直な意見を書いていただくためにも、できれば無記名で行い、その結果を接遇等の改善に役立てます。

例えば、次のような項目について質問してみてください。

  • 院長や医師の対応
  • スタッフさんや看護師などの対応
  • 院内の設備面
  • 診療時間や駐車場など、来院する際の利便性

アンケート内容を受けて、スタッフさんの対応に改善の余地がある場合に気をつけたいのが、個人を攻撃しないこと。課題を前向きに改善する方法を議論し、良い点をさらに伸ばす話し合いを心がけます。

患者様に納得感を持っていただくには、アンケートの結果や改善内容を院内で共有するのもおすすめです。要望を「ただ聞くだけ」では終わらないクリニックだと理解でき、良い印象を持ってもらう機会に繋がります。

3)1on1の実施、労働環境の改善:「働き続けたい」と思える仕組み作りへ

開業後の悩みのひとつに、スタッフの退職者が増え、人員が安定しないことが挙げられます。
患者対応を優先せざるを得ないばかりに、時短勤務として働き始めた人が、結局フルタイム勤務とほぼ変わらない状況になり、不満が募って辞めてしまうケースや、退職者の穴を埋めるために増えた業務負担に対応し…疲弊。その後退職に繋がる場合もあります。

このような状況を防ぐために、継続的な採用活動や、予約・問診システム、自動精算機・セミセルフレジなどのITシステムを活用し、自動化できるところは自動化し、スタッフさんの業務の負担を減らすのもひとつの手です。

また、1on1(​​部下の育成やモチベーション向上を目的に実施する、個人面談)などを実施し、スタッフさんの不満や業務上の疑問をクリアにする対応も必要です。

このような業務を確実に遂行するために、事務長を採用するクリニック様も珍しくありません。院長先生の業務負担を減らしながら、円滑に運営するには、時には「人に任せる」ことも大切なのです。

まとめ

今回は、スタッフさんの業務に関わる準備ポイントをまとめてご紹介しました。

POINT

  • 内装設計:スタッフさんや患者様の動線を考慮する
  • 医療機器、ITシステムの選定:レセコン選定時は、特にスタッフさんの意見を参考に
  • 人材採用、研修:約2カ月前から開始。契約に関わる書類や手続きも忘れずに
  • 家具、備品の調達:患者様の対応も考えた選定、配置を
  • 内覧会の開催:クリニックを印象付けるチャンス。スタッフさんへの意識共有も実施する

開業準備には様々なタスクがあり、院長先生ひとりで全てをまかなうことは困難です。時には業者やメーカーの方に頼りながら進行しましょう。

なお、2,500件以上の医療機関様をサポートしているシスポは、セミセルフレジOWENを中心に、受付・会計まわりのご相談をトータルコーディネートいたします。開業予定の方、受付〜会計までのIT化にお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。